市街化調整区域の開発許可申請

原則として市街化調整区域での開発行為はできません。
しかし全ての開発行為を不可としてしまうと、その地域に必要なスーパーやコンビニなども建設できず、日用品の買出しなどもできなくなってしまいます。これではその地域がとても生活のしにくい環境になってしまいます。

 

都市計画法・第29条(開発行為の許可)


都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。(略)

都市計画法・第33条(開発許可の技術基準)


都道府県知事は、開発許可の申請があった場合について、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準に適合しており、かつ、その申請の手続きが法律に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。(略)

都市計画法・第34条(開発許可の立地基準)


前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為については、当該申請に係る開発行為およびその申請の手続きが同条に定める要件に該当するほか、次の各号のいずれかに該当しなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。(略)

 

そこで法第33条の技術基準に加えて、市街化調整区域の場合は法第34条の各号にて立地基準を定め、この立地基準のいずれかに該当する場合は法29条に基づく開発許可を認めているのです。
なお、開発行為の伴わない建築行為であっても市街化調整区域においては法第43条の許可を取得しなければなりません。

市街化調整区域の建築許可申請

法第34条各号の立地基準

市街化調整区域の開発行為の許可は、法第34条の各号に列挙されているものに限ります。
法第33条の技術基準を満たした上で、さらに法第34条の各号のいずれかの立地基準を満たす必要があります。

 

このページは「埼玉県の開発許可制度の基準」を参考にして、制度の概要やイメージが伝わるような記事を作成しています。各号の審査基準は市町村ごとに異なる場合があり、予定建築物の規模など詳細な数値の定めは、各市町村のホームページで確認できます。

 

 

法第34条第1号
(周辺居住者のための日常生活に必要な物品販売等)


主として当該開発行為の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

 

第1号は、市街化調整区域内の居住者のために日常生活が健全に営まれるように必要な施設を挙げています。
スーパー、理容店、学校、医療機関、デイサービス施設、保育所など私たちの生活に密着した必要な施設の建築を目的とした開発行為を許可しうるとしました。

 

なお、本号の定めは「市街化調整区域である開発区域の周辺住民の日常生活に必要な建築物」ですから、開発区域は相当数の利用者が想定される集落内である必要があります。

 

市街化調整区域 開発許可申請

 

審査基準


  1. 申請地が既存の集落内に存すること
  2. 予定建築物の用途・規模が次のいずれか
    • 幼稚園・保育所・小学校・中学校・義務教育学校
    • 特別養護老人ホーム・老人短期入所施設・左記に関連する通所施設
    • 店舗及び飲食店(150平方メートル以内)
    • 診療所・助産所・施術所(150平方メートル以内)
    • 自動車修理工場(300平方メートル以内)
    • 農業協同組合及び農林漁業団体の事務所

 

 

法第34条第2号
(鉱物資源、観光資源等の有効利用上の必要施設)


市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

第2号は市街化調整区域内における鉱物資源の有効な利用上必要な建築物等を挙げています。資源は有限かつ貴重な財産であり、地域の発展のためにはこれを有効に利用することが求められています。この有効利用のためには、採掘や調査のための施設はもとより、観光展望施設等の建築物等も必要となることから、市街化調整区域への立地を許可しています。

ただし、この項目において鉄鋼業、非鉄金属製造業、コークス製造業、石油精製業は除かれます。
市街化調整区域 開発許可申請

審査基準


  1. 開発区域は、利用の対象となる鉱物資源が存在する市街化調整区域内であること
  2. 予定建築物
    • 用途が鉱業法・第3条に規定する鉱物(金属鉱業、石炭・亜鉛鉱業、原油・天然ガス鉱業、採石業、窯業原料用鉱業、セメント製造業等)に該当する建築物等
    • 観光資源の鑑賞のために必要な展望台等の建築物
    • 観光維持に必要な休憩施設・宿泊施設・入浴施設

 

 

法第34条第3号
(特別の自然的条件を必要とする施設)


温度、湿度、空気等について特別の条件を必要とする政令で定める事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、当該特別の条件を必要とするため市街化区域において建築し、又は建設することが困難なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為。

 

温度・湿度・空気等に関する特別の自然的条件を有効に利用すべき資源としてとらえ、これらの条件に支配される事業の用に供する建築物等は、その区域でしか実現不可能なため、市街化調整区域の立地を認めるものとしました。

 

しかし、現在の工業技術水準においては人工的にこれらの自然的条件を実現可能であるため、本条の政令は未制定です。したがって、本号により許可される開発行為はありません。

 

 

法第34条第4号
(農林漁業用施設及び農林水産物の処理等の施設)


農業、林業若しくは漁業の用に供する建築物で第29条第1項第2号政令で定める建築物以外のものの建築又は市街化調整区域において生産される農産物、林産物若しくは水産物の処理、貯蔵若しくは加工に必要な建築物若しくは第一種特定工作物の建築若しくは建設の用に供する目的で行う開発行為

 

法第29条

都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、・・・(中略)・・・許可を受けなければならない。
ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
2号 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

 

政令第20条

法第29条第1項第2号及び第2項第1号の政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。

  1. 畜舎、蚕室、温室、育種苗施設、家畜人工授精施設、孵卵育雛施設、搾乳施設、集乳施設その他これらに類する農産物、林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する建築物
  2. 堆肥舎、サイロ、種苗貯蔵施設、農機具等収納施設その他これらに類する農業、林業又は漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する建築物
  3. 家畜診療の用に供する建築物
  4. 用排水機、取水施設等農用地の保全若しくは利用上必要な施設の管理の用に供する建築物又は索道の用に供する建築物
  5. 前各号に掲げるもののほか、建築面積が90平方メートル以内の建築物

 

市街化調整区域は、農業等の第一次産業が継続して営まれることが多い区域と考えられます。
第4号の条文は、本号以外に2つの条文で除外項目を確認しなければいけないので少し難しいですが、条文では政令第20条で定めた項目を許可不要としています。
つまり、本号は政令第20条以外の農業、林業、漁業に関する処理や貯蔵、加工する施設について開発行為を許可しうることとしたものです。
具体的には食料品製造業、缶詰、精穀・製粉業・砂糖製造業、倉庫業などが該当します。

 

なお、政令第20条に列挙された項目は許可の取得を不要としているものであり、建築等ができない主旨のものではありません。

 

市街化調整区域 開発許可申請

 

審査基準(農林漁業の用に供する建築物)


  1. 農林漁業として、日本標準産業分類に掲げるもので、かつ、業種ごとの基準に該当するものであること
  2. 開発区域は、予定建築物がその用に供される農林漁業が営まれている市街化調整区域内であること
  3. 農林漁業の用に供する建築物で、法第29条第1項第2号の政令で定める建築物以外のもの

 

審査基準(農林漁業の処理・貯蔵・加工に必要な建築物等)


  1. 開発区域は、予定建築物等において取り扱う農林水産物のうち、数量及び金額において過半のものが生産される市街化調整区域内であること
  2. 予定建築物
    • 農林水産物を集荷、出荷、選別、貯蔵するための建築物等で、農林漁業に分類される事業以外の事業の用に供されるもの
    • 農林水産物を直接原材料として加工する事業に供する建築物等
    • 農林水産物を販売するための建築物等

 

 

法第34条第5号
(特定農山村地域における農林業等活性化施設)


特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成5年法律第72号)第9条第1項の規定による公告があった所有権移転等促進計画の定めるところによって設定され、又は移転された同法第2条第3項第3号の権利に係る土地において、当該所有権移転等促進計画に定める利用目的(同項第2号に規定する農林業等活性化基盤施設である建築物の建築の用に供するためのものに限る。)に従って行う開発行為

 

「特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律」(以下、特定農山村法)は、地理的状況が悪い中山間地域において、地域の特性に即した農林業等の活性化のための基盤整備の措置を講じ、豊かで住みやすい農山村の育成を目的として制定されました。
この法律の所有権移転促進計画の際に、知事は農林業等活性化基盤施設の立地について・・

  • 都市計画法・第34条各号
  • 都市計画法施行令・第36条第1項第3号

このどちらに適合するかを審査します。

 

なお、埼玉県において、令和2年1月現在で特定農山村法の適用があるのは春日部市と越生市の一部のみですが、いずれも所有権移転促進計画は未作成ですので、本号の適用を受けて許可される開発行為はありません。

 

 

 

法第34条第6号
(中小企業の共同化・集団化のための施設)


都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体になって助成する中小企業者の行う他の事業者との連携若しくは事業の共同化又は中小企業の集積の活性化に寄与する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

第6号は、例えば県と中小企業総合事業団が一体となって助成する、中小企業の事業の共同化又は工場、店舗等の集団化に寄与する建築物を挙げています。例えば、公害などの地域問題を抱えた企業が集まって団地を設立するなどして1か所に集まり、その問題を解決しつつ大きく成長を図るというような施設です。

 

本号の「都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体となって助成する事業」とは、その資金として県と中小企業基盤整備機構から中小企業高度化資金の貸付を受けて行われる事業としています。したがって、具体的な事業内容は、中小企業高度化資金貸付制度の中で規定されるところによります。
市街化調整区域 開発許可申請

 

審査基準


  1. 開発区域は、法第18条の2第1項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針に基づいて市町村が策定した土地利用に関する計画に支障のない区域であること
  2. 予定建築物等は、埼玉県又は中小企業基盤整備機構から中小企業高度化資金の貸付を受けて行う中小企業の高度化事業の用に供される建築物等であること

 

 

法第34条第7号
(市街化調整区域内の既存工場の関連施設)


市街化調整区域内において現に工業の用に供されている工場施設における事業と密接な関連を有する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、これらの事業活動の効率化を図るため市街化調整区域内において建築し、又は建設することが必要なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

市街化調整区域 開発許可申請

第7号は、市街化調整区域内にすでに存在する主たる工場施設の隣接地に、従たる自己の業務のための工場施設等の建築等の定めを挙げています。
既存工場の事業の効率化を図りつつ、同時に密接な関係を有するという制限を加え、「都市の急速な発展により、市街地が無秩序・無計画に広がっていくこと(スプロール現象)」を防止しています。

 

審査基準


  1. 市街化調整区域に現に存する日本標準産業分類大分類E−製造業に分類される工場で、次のいずれかの数量及び金額におけるもの
    • 既存工場における事業の原材料の5割以上を、自己の事業における生産物の中から納入すること
    • 既存工場における事業の生産物の5割以上を、自己の事業における原材料として受け入れること
    • 自己の事業の原材料の5割以上を、既存工場における事業の生産物の中から受け入れること
    • 自己の事業の生産物の5割以上を、既存工場における事業の原材料として納入すること

  2. 開発区域は、原則として既存工場に隣接する土地であること
  3. 予定建築物は、関連事業の用に供する建築物等とする

法第34条第8号
(危険物(火薬類)の貯蔵又は処理に供する施設)


政令で定める危険物の貯蔵又は処理に供する建築物又は第一種特定工作物で、市街化区域内において建築し、又は建設することが不適当として政令で定めるものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

政令第29条の6
法第34条第8号(法第35条の2第4項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の政令で定める危険物は、火薬類取締法(昭和25年法律第149号)第2条第1項の火薬類とする。

 法第34条第8号の政令で定める建築物又は第一種特定工作物は、火薬類取締法第12条第1項の火薬庫である建築物又は第一種特定工作物とする。

 

第8号は、火薬類取締法で定める危険物の貯蔵や処理を目的とした建築物等を挙げています。
通念上、建築物が密集する市街地に火薬類が置かれているのはいくら何でも危険です。このようにその危険度から、市街化区域においての管理が難しいような火薬類を貯蔵する建物等の場合に適用し、市街化調整区域においても許可しうることとしています。
なお、政令で定める危険物とは、火薬取締法第2条第1項に規定されている火薬類をいいます。
また、本号は許可の判断となる基準が全て法律に規定されているので審査基準を定めず、その判断は当該法律の基準に従うこととなります。

市街化調整区域 開発許可申請

 

 

 

法第34条第9号
(市街化区域において建築し、又は建設することが困難又は不適当な施設)


前各号に規定する建築物又は第一種特定工作物のほか、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は不適当なものとして政令で定める建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

政令第29条の7

法第34条第9号(法第35条の2第4項において準用する場合を含む。)の政令で定める建築物又は第一種特定工作物は、次に掲げるものとする。

  1. 道路の円滑な交通を確保するために適切な位置に設けられる道路管理施設、休憩所又は給油所等である建築物又は第一種特定工作物
  2. 火薬類取締法第2条第1項の火薬類の製造所である建築物

 

第9号は、市街化区域及び市街化調整区域の区域区分に関係なく、定められた範囲内の立地であればその機能を果たすことができる建築物等に関して開発行為を許可しうることとしています。本号の対象建築物等としてはドライブイン、コンビニ、ガソリンスタンド、火薬製造所、道路管理施設などです。

 

確かに市街化調整区域の定めがあるとはいえ、道中にガソリンスタンドや休憩できるコンビニが全くないのは考えものです。ただし、道路沿いならどこでも良いというわけではなく、解釈上は「相当程度の交通量があり、かつ、長距離の区間を結ぶ幹線道路の円滑な交通を確保するために設けられるもの」となっており、これに相当する国道・県道・市町村道に限られます。

 

なお、「火薬類の製造所」とは、火薬類取締法第2条第1項に規定する火薬類の製造所である建築物です。火薬類に関しては第8号の規定もあるので混同しがちですが、第8号は「火薬類の貯蔵・処理に関する施設」を定めているのに対して、第9号は「火薬類の製造所」の定めを置いています。

審査基準(休憩所)


  1. 開発区域は、市街化調整区域内の現に供用されている国道、県道又はこれらの道路と交差又は接続する幅員12m以上の市町村道(国道又は県道と交差又は接続する箇所から12m以上の幅員が連続する区間に限る。)(以下「対象道路」という。)に6m以上接していること。

    なお、対象道路(高速自動車国道並びに首都圏中央連絡自動車道及び東京外かく環状道路を除く。)に市町村道である側道が存する場合であって、対象道路の通行車両が当該側道を経由して開発区域に出入り可能な道路構造である場合には、当該側道を対象道路とみなす。

  2. 予定建築物等は次のいずれかに該当するものであること。
    • ドライブイン(自動車運転者及び同乗者に飲食物を提供し、休憩させるための飲食店等の施設であって宿泊施設を併設しないものをいう。)
    • コンビニエンスストア(主として飲食料品を中心とした各種最寄り品をセルフサービス方式で小売りする事業所で、店舗規模が小さく、終日又は長時間営業を行うものをいう。)
  3. 予定建築物の規模に応じて、複数の大型車(トラック、バス等)を含む適当な台数の駐車場を設けていること。

 

審査基準(給油所)


  1. 開発区域は、市街化調整区域内の現に供用されている国道、県道又はこれらの道路と交差又は接続する幅員12m以上の市町村道(国道又は県道と交差又は接続する箇所から12m以上の幅員が連続する区間に限る。)(以下「対象道路」という。)に6m以上接していること。

    なお、対象道路(高速自動車国道並びに首都圏中央連絡自動車道及び東京外かく環状道路を除く。)に市町村道である側道が存する場合であって、対象道路の通行車両が当該側道を経由して開発区域に出入り可能な道路構造である場合には、当該側道を対象道路とみなす。

  2. 予定建築物等は、対象道路を通行する車両に揮発油、軽油、液化ガス等の燃料を給油充填等するための施設(以下「給油所等」という)である建築物又は第一種特定工作物とする。

    なお、次に掲げる施設を併設できることとする。ただし、当該施設が建築物であるときは、給油所等である建築物(キャノピー以外のもの)と同一棟であるものに限る。

    • 自動車の点検・整備を行う作業場
    • 洗車場

法第34条第10号
(地区計画又は集落地区計画の区域内における開発行為)


地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為

 

第10号は、地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合して開発行為が行われるのであれば、無秩序な市街化のおそれがないことから、これを許可しうるとしたものです。

  • 「地区計画」とは

    建築物の建築形態や公共施設等の配置等からみて、区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の街区を整備し、保全することを目的として都市計画に定められる計画

  • 「集落地区計画」とは

    営農条件と調和のとれた良好な居住環境の確保と適正な土地利用を図ることを目的として集落地域整備法に基づき都市計画に定めることができる計画

 

市役所等で調査をすると地区計画等の有無を確認できます。定めがある場合はその計画内容に適合した建築物等を計画しなければなりません。
本号に適合するものとして開発許可を行う場合は、法第33条第1項第5号の規定により、予定建築物等の用途又は開発行為の設計が当該地区計画等に定められた内容に即して定められているのみならず、さらに、予定建築物等が当該地区計画等に定められた内容に適合している、つまり当該地区計画等に定められた道路等の施設や予定建築物の用途等に正確に一致している必要があります。

 

なお、本号の審査基準は該当する地区計画等の中でその基準が定められています。

 

 

 

法第34条第11号
(条例で指定した集落区域における開発行為)


市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね50以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令(政令第29条の8)で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの

 

政令第29条の8

法第34条第11号(法第35条の2第4項において準用する場合を含む。)の政令で定める基準は、同号の条例で指定する土地の区域に、原則として、第8条第1項第2号ロからニまでに掲げる土地の区域を含まないこととする。

 

政令第8条
区域区分に関し必要な技術的基準は、次に掲げるものとする。
  1. (略)
  2. (略)
    • イ)(略)
    • ロ)溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域
    • ハ)優良な集団農地その他長期にわたり農用地として保存すべき土地の区域
    • ニ)優れた自然の風景を維持し、都市の環境を保持し、水源を涵養し、土砂の流出を防備する等のため保全すべき土地の区域

 

第11号は、開発許可権限を有している地方公共団体があらかじめ条例で区域を定め、その区域で環境保全上支障のない建築物を建築することを許容することとした制度です。
市街化調整区域の中にあっても、市街化区域に隣接等している区域では、建築物が一定程度集積してある程度市街化が進み、既に相当程度の公共施設が整備されており、また、隣接する市街化区域の施設を利用することも可能です。

 

そのような状況の区域では、地域の実情に精通した地方公共団体が、条例により区域を指定し、その区域において環境の保全上支障がないとした建築物を建築するための開発行為が行われたとしても、スプロール(道路や排水施設等の公共施設が整備されないまま市街化すること)の対策上支障がないとの考えで設けられたものです。

おおむね50以上の建築物の連たんとは


市街化調整区域の独自の定めの1つがこの50戸連たんです。開発計画地において、建築物50戸以上がおおむね50メートル以内の間隔で存しているかが基準の1つとなります。
確かに市街化調整区域の中にあっても、市街化区域と隣接等していれば、区域として一体的な日常生活圏を構成していると認められるといえます。
しかし、建築物がある程度集積していない区域では、一般的に公共施設の整備が進んでいないと考えられ、このような地域において開発行為を原則容認していくことは、新たな公共投資が必要となる可能性を生じさせるものであり、このような区域を対象とすることは、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域の趣旨に反すると考えられるからです。

 

埼玉県では、本号の運用にあたり、「埼玉県都市計画法に基づく開発許可等の基準に関する条例(平成13年埼玉県条例第61号)」を制定しています。また、実際の区域を指定するにあたり、指定運用方針を策定して区域指定の考え方や指定手続を定めています。

 

法第34条第12号
(市街化を促進するおそれがない等と認められる条例で定める開発行為)


開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、政令(政令第29条の9)で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの

 

政令第29条の9

法第34条第12号(法第35条の2第4項において準用する場合を含む。)の政令で定める基準は、同号の条例で定める区域に、原則として、第8条第1項第2号ロからニまでに掲げる土地の区域を含まないこととする。

 

政令第8条
区域区分に関し必要な技術的基準は、次に掲げるものとする。
  1. (略)
  2. (略)
    • イ)(略)
    • ロ)溢水、湛水、津波、高潮等による災害の発生のおそれのある土地の区域
    • ハ)優良な集団農地その他長期にわたり農用地として保存すべき土地の区域
    • ニ)優れた自然の風景を維持し、都市の環境を保持し、水源を涵養し、土砂の流出を防備する等のため保全すべき土地の区域

 

第12号は、条文の「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為」という抽象的な要件を、しっかりと明確化できるように、都道府県の条例でその基準を決めていいですよ。という趣旨の定めです。

 

平成12年の改正までは、このような開発行為は開発審議会の議を経て許可されて来ました。(旧第10号ロ。)
ただ、それまでの許可実績に基づき定形化し、それを地域ごとの条例で許可基準を定めたほうが、手続きの迅速化及び簡素化を図れるとし、その旨を法第34条に設定しました。
本号の規定により定める開発行為としては、埼玉県では県条例第6号にその定めを置いています。

 

県条例第6条


法第34条第12号の規定により、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として定めるものは、次の各号に掲げるものとする。
ただし、都市計画法施行令(昭和44年政令第158号。以下「令」という。)第8条第1項第2号ロからニまでに掲げる土地の区域又は用途地域が定められている土地の区域における第2号から第8号までに掲げる開発行為は、この限りでない。

 

1号 法第18条の2第1項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針に基づいて市町村が策定した土地利用に関する計画に即して知事が市町村長の申出により予定建築物の用途に限り指定した土地の区域において、当該指定に適合した建築物を建築する目的で行う開発行為

 

第6条第1項第1号は、市町村の都市計画の基本的方針「市町村マスタープラン」は、具体的な区域の土地利用計画により策定された開発行為とされ、市街化調整区域から排除すべきでないとして知事がその区域を指定する主旨の定めです。なお、知事が市町村長の申出に応じて指定する際、県条例施行規則第3条第1項各号の基準に従うこととしています。

 

 

2号 自己の居住の用に供する建築物を建築する目的で行う開発行為で次のいずれかに該当するもの

  • イ)おおむね50以上の建築物(市街化区域に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、知事が指定した土地の区域(以下「既存の集落」という。)に、区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された日(以下「区域区分日」という。)前から自己又はその親族が所有する土地において行うもの

 

第6条第1項第2号は、市街化調整区域において、一定の要件を満たしている自己居住用の住宅の建築を認める基準です。自己用住宅の建築を認めるのにやむを得ない場合として、要件を三つ(本号イ・ロ・ハ)に整理しています。おそらく市街化調整区域の自己用住宅の建築計画において、非常に重要な定めを置いている規定です。

  • 「既存の集落」は第11号の項目でも説明しました、いわゆる50戸連たんのことです。埼玉県では本号においても同様の考え方です。
  • 「区域区分日前から自己又はその親族が所有する土地」とは、市街化区域・市街化調整区域の線引き前から自分又は親族が所有している土地のことです。ここでいう親族とは、民法725条に規定されている6親等内の血族、配偶者、3親等以内の婚族です。この範囲であれば、相続で所有権が祖父から母へ移った場合でも問題ありません。
  • ロ)当該開発行為に係る土地の存する市町村又は当該市町村に隣接する市町村の市街化調整区域に20年以上居住する親族を有する者が、既存の集落に自己又は自己の親族が所有する土地において行うもの

 

「20年以上居住する親族を有する者」とは、開発区域が存する市町村又は隣接する市町村の市街化調整区域に20年以上の長期にわたり居住している親族を有する者のことをいいます。親族が姻族である場合には、その姻族が当該市街化調整区域に20年以上居住していれば、「20年以上居住する親族」に該当します。婚姻から20年経過している必要はありません。

 

  • ハ)当該開発行為に係る土地の存する市町村又は当該市町村に隣接する市町村の市街化調整区域に区域区分日前から居住する親族を有する者が、区域区分日前から自己又は自己の親族が所有する土地において行うもの

 

本基準と(ロ)の基準は似ていますが、(ロ)では開発計画地が「既存の集落内」にあることが必要でした。これに対して本基準は開発計画地が「既存の集落内」にある必要はないものの、区域区分日前から自分やその親族が所有している必要があります。
例えば、将来自分の子どもが家を建てるときのために土地を所有していたのですが、線引きがなされて市街化調整区域となった当該土地のような場合です。

 

 

3号 20年以上居住する市街化調整区域の土地又はその近隣において、自己の業務の用に供する小規模な建築物であって規則で定めるものを建築する目的で行う開発行為

 

条例施行規則第4条
条例第6条第1項第3号の規則で定める建築物は、次に掲げるものとする。
  1. 工場でその延べ床面積が100平方メートル以内のもの

    (作業場の床面積の合計が50平方メートル以内のものに限る。)

  2. 事務所でその延べ床面積が100平方メートル以内のもの

 

市街化調整区域内において長期にわたり(20年以上)居住している者が生計を確保するために、小規模の自己業務用の建築物を建築することは周辺への影響も少なく、生活権保障の観点からやむを得ないと考えられます。

 

ここでいう「近隣」とは住居と実体的には一体であると認められる位置を意味します。したがって住居とかけ離れた場所に建築することは認められません。ここでも「既存の集落」において建築物が連たんしている必要があります。

 

 

法第34条第13号
(既存権利の届出に基づく開発行為)


区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された際、自己の居住若しくは業務の用に供する建築物を建築し、又は自己の業務の用に供する第一種特定工作物を建設する目的で土地又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた者で、当該都市計画の決定又は変更の日から起算して6月以内に国土交通省令(省令第28条)で定める事項を都道府県知事に届け出たものが、当該目的に従つて、当該土地に関する権利の行使として行う開発行為(政令(政令第30条)で定める期間内に行うものに限る。)

 

政令第30条
法第34条第13号(法第35条の2第4項において準用する場合を含む。)の政令で定める期間は、当該都市計画の決定又は変更の日から起算して5年とする。

 

省令第28条

法第34条第13号の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるもの(自己の居住の用に供する建築物を建築する目的で権利を有する者にあつては、第1号に掲げるものを除く。)とする。

  1. 届出をしようとする者の職業(法人にあっては、その業務の内容)
  2. 土地の所在、地番、地目及び地積
  3. 届出をしようとする者が、区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された際、土地又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた目的
  4. 届出をしようとする者が土地の利用に関する所有権以外の権利を有する場合においては、当該権利の種類及び内容

 

第13号は、市街化調整区域の計画が決定された際に、すでに自己用建築物の建築等の目的で所有権・地上権・借地権などを有していた場合に、その権利の行使を保障するため開発行為を許可しうることとした制度です。すでに権利を有している者に対して、「市街化調整区域に指定するのでそれはできません」とするのは余りにも酷だからです。

  • 「自己の居住の用に供する建築物」とは

    開発行為を行った者が、自ら生活の根拠として使用しうる建築物です。

  • 「自己の業務の用に供する建築物等」とは

    開発行為を行った者が、継続的に自己の業務に係る経済活動を行うというものです。したがって、住宅は該当せず、譲渡や賃貸を目的とするものも該当しません。

  • 「土地又は土地の利用に関する権利を有していた者」とは

    所有権・地上権・借地権などを市街化調整区域の指定前に取得していた者です。

本号の規定は、市街化調整区域の指定前の権利を経過的に認めるものですから、その指定から6カ月以内に省令に規定する事項を知事に届け出る必要があり、また、その開発行為は指定から5年以内に完了する必要があります。

 

 

法第34条第14号
(開発審査会の議を経て許可する開発行為)


前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為

 

第14号は、第1号から第13号までのいずれの規定にも該当しない開発行為について、地域特性や個別の事情から総合的に勘案し、その計画する建築物の用途、目的、規模、位置等を具体的に検討した上で開発審査会の議を経てから許可しうることを定めています。

 

開発審査会は第三者機関となっており、公正かつ慎重な運用を行います。流れとしては、開発許可権者が本号に該当するかを判断し、許可をしようとする場合のみ許可権者が開発審査会へと諮問することになります。
なお、不許可の場合は諮問することなく許可権者が直接不許可の判断を下します。

 

また、病院、介護老人保健施設及び共同生活援助を行う事業所については、急激な高齢化への対応や医療環境の必要性等の地域の実情を勘案し、市街化調整区域の立地においても本号に該当すると認められ、一定のの要件を満たす場合には、開発審査会に付議できるものとします。

 

◆ ◆ ◆

第一種特定工作物とは?


条文でよく見かける第一種特定工作物とは、開発許可制度において、周辺地域の環境に悪影響をもたらすおそれがあるものとして規制の対象となる工作物をいいます。厳密には次の2種類が定められています。

第一種特定工作物

  • コンクリートプラント
  • アスファルトプラント
  • クラッシャープラント
  • 危険物貯蔵処理施設

第二種特定工作物

  • ゴルフコース
  • 野球場
  • 陸上競技場
  • 墓園
  • レジャー施設など

◆ ◆ ◆

【このページのまとめ】

 

  • 市街化調整区域の開発行為は原則として不可
  • 例外として都市計画法・第34条各号の立地基準のいずれかを満たす
  • 都市計画法・第33条の技術基準も満たす必要がある
  • 都市計画法・第29条に第34条各号を明記して申請をする
  • 第1号〜第9号は主に店舗や工場・施設など
  • 第10号〜第13号は主に住宅に関する定め
  • 第14号はその他の建築物等

 

市街化調整区域の開発許可申請の説明は以上です。

 

 

都市計画に関するご相談、ご依頼はこちらからどうぞ