開発行為の許可申請
そもそも開発行為とは?
主として建築物の建築等を目的とした「土地の区画形質の変更」を開発行為と呼び、「土地の面積が一定を超える」場合、許可権者の許可が必要となります。
都市計画法・第29条(開発行為の許可)
都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。(略)
許可不要となる開発行為(法29条第1項各号)
- 一定規模未満の開発行為
- 農業、林業、漁業の用に供する建築物、またはこれらの業務を営む者の居住建築物
- 公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
- 都市計画事業等の施行として行う開発行為
- 公有水面埋立法の免許を受けた埋立地における開発行為
- 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
- 通常の管理行為、軽易な行為
土地の区画形質の変更
「区画」と「形」と「質」をあわせて「区画形質」と呼称しています。それぞれに変更の基準が設けてあり、該当する場合に「開発行為」となります。
土地の区画の変更
従来の敷地の境界の変更。道路や水路などの公共施設の新設、変更、廃止などによりその土地の区画を変更すること。
土地の形の変更
- 高さ〇〇cmを超える切土
- 高さ〇〇cmを超える盛土
- 高さ〇〇cmを超える一帯の盛土および切土
土地の質の変更
宅地以外(農地など)の土地を宅地にすること。
開発行為の許可が必要となる土地の面積
開発行為そのものに許可が必要なのではなく、一定規模以上の開発行為の場合に許可が必要になる、ということです。ではその一定規模とはどの程度か、というわけで表にまとめました。計画する区域と面積で許可が必要かどうかを確認しましょう。
区域 | 規模 | 備考 | 技術基準 | 立地基準 |
---|---|---|---|---|
市街化区域 |
1000u以上の |
原則 | 〇 | |
500u以上の |
三大都市圏の既成市街地、 |
〇 | ||
300u以上の |
許可権者が条例で引下げ可能な下限面積 |
〇 | ||
市街化調整区域 |
原則として |
〇 | 〇 | |
非線引き区域 |
3000u以上の |
許可権者が条例で300uまで |
〇 | |
準都市計画区域 |
3000u以上の |
許可権者が条例で300uまで |
〇 | |
都市計画区域および |
10000u以上の |
〇 |
原則は1000u以上で許可のところ、既成市街地の多くは条例で500u以上として運用されています。
また表記の通り条例で300uまで下げることができ、実際300uまで引き下げ、より厳しい基準を採用している自治体は少なからず存在します。開発行為の許可の基準を300u以上としている自治体は審査が非常に厳格で、他の市町村と比べて図面・書類・工程など厳しくチェックされ協議が難航し想定外の時間が掛かる場合があります。自治体が定める許可までの工程を、窓口でしっかりと確認しましょう。
法第33条各号の技術基準
都市計画法・第33条(開発許可の技術基準)
都道府県知事は、開発許可の申請があった場合について、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(第4項及び第5項の条例が定められているときは、当該条例を定める制限を含む。)に適合しており、かつ、その申請の手続きが法律に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。(以下略)
開発許可制度において法第33条は、「公共施設等の整備や防災上の措置を講ずることを義務付けるなど良好な宅地水準を確保する」という役割を有しています。これに基づき技術基準を定め、この基準に適合している場合に、都道府県知事は開発許可をしなければならない旨を定めています。
つまり、許可を取得するにあたり必ずこの技術基準を満たさなければならないということになります。また、市街化調整区域の場合はこの技術基準に加えて法第34号各号の立地基準も満たす必要があります。
法第33条第1項各号
- 予定建築物の用途が用途地域等に適合していること
- 道路、公園等が適当に配置されていること
- 排水施設が下水を有効に排出するとともに、開発区域や周辺に溢水が生じないような構造及び能力で適当に設置されていること
- 給水施設が給水需要に支障をきたさないような構造及び能力で適当に設置されていること
- 予定建築物等の用途及び開発行為の設計が地区計画等に定められた内容に則して定められていること
- 開発区域内の利便の増進と開発区域及び周辺地域の環境の保全が図られるよう公共・公益施設及び予定建築物の用途の配分が定められていること
- 地盤の改良、擁壁の設置等、安全上必要な措置が定められていること
- 災害危険区域等の揮発行為を行うのに適当でない区域内の土地を含まないこと
- 開発区域における樹木の保存・表土の保全等が講ぜられるよう設計が定められていること
- 緩衝帯が設置されていること
- 道路・鉄道等の、輸送の面からみて支障がないこと
- 申請者に当該開発行為を行うために必要な視力及び信用があること
- 工事施行者に当該開発行為に関する工事を完了するために必要な能力があること
- 当該開発行為の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていること
一般的な開発許可の取得まで(市街化区域)
一定規模の開発行為を行う場合は都道府県知事の許可が必要です。しかし実際に許可を得るためには法第29条に基づく申請だけではなく、事前に公共施設の管理者の同意を得るなど、本申請以外の協議は非常に多く、協議の相手方も多岐に渡ります。大まかな流れはあるのですが、協議ごとの内容や仕組みは市町村ごとに特色があり、多くは条例や施行令に基づき運用されています。
調査業務
調査で必要な図面や書類を取得し、役所へ計画の概要を伝えます。備付けのフローチャート表のようなものがありますので工程を確認します。同じ法29条の申請でも市町村により1〜2ヵ月は工程に差が出てきます。また、許可権者の主体を必ず確認します。理由として市町村ではなく最終的な許可が「県」となっている場合があるからです。なお、計画面積により申請手数料も変わります。都市計画図や都市地形図などの図面は後で必要になりますので、この時点で購入しておきます。
相談票(例:回答まで3〜4週間程度)
計画において1番最初に市町村に対して行う申請となります。計画を申請書に記載し、添付資料とともに提出します。市町村により委任状が必要な場合もあります。受付後に市町村側で適用法令の確認、既存権利の確認、現地確認など行い、必要な手続きや許可などを回答してくれます。
標識の設置(例:30日間以上の設置期間等)
さいたま市など、市町村によっては標識(計画看板)を現地に設置してから〇日以上経過していない場合は、次の申請ができないという制度となっています。計画にこの期間を含めるのを忘れてしまうと、当初の許可取得までの期間が大幅ずれてしまいますので注意が必要です。
事前協議申請(例:締結まで1カ月半〜3カ月)
水道や下水道、道路など公共施設にはそれぞれ管理者が存在します。それぞれの管理者と技術基準を満たすため、法第32条・第1項及び第2項の規定に基づき協議をし、同意を得る必要があります。
土地利用計画図から始まり、断面図や縦断図など、市町村にが指定する図面を規定部数作成し、必要書類とともに申請します。膨大な数の資料を揃えることになります。開発担当窓口がとりまとめてくれる市町村はありがたいのですが、中には全ての管理者と個別協議をしなければならない市町村も存在します。
関係各課との協議が完了すれば、法第32条の公共施設管理者との協議を締結します。
開発行為の許可申請(例:許可まで30日〜45日)
法第29条・第1項を法第30条に基づき手数料を支払い申請します。公共施設管理者の同意書を始め、申請者の資格、資力、資金計画、経歴などの定めれた添付書類や図面を提出します。確認後に決裁を経て、許可条件を付して開発許可がおります。
市街化区域の許可取得までの流れは以上です。
以降は工事を開始し、定められた手続きに則り中間・完了検査を受け検査済証を発行してもらい建築行為に入っていきます。
弊所における業務の流れ
開発行為の業務において、弊所は許認可業務のみを扱いますので、まずは土地家屋調査士のご指定をお願い致します。以降連携して業務にあたることとなります。
調査のみのご依頼、図面作成のみのご依頼もお受けいたしますので、必要な場合に要所要所でご用命ください。なお、図面の作成業務のみのご依頼でも役所の図面補正には対応いたします。
【このページのまとめ】
- 開発行為とは「土地の区画形質の変更」をいう
- 一定規模以上の開発行為の場合に許可が必要になる
- 開発許可取得には都市計画法・第33条の技術基準を満たす必要がある
- 相談から開発許可まで概ね4〜6カ月かかる
- 土地家屋調査士と連携して業務を進行
開発行為の許可申請の説明は以上です。