市街化調整区域の建築許可申請
本条(都市計画法・第43条)は、市街化調整区域内の建築物の新築等の制限を行うものです。
原則として建築行為を禁止されている市街化調製区域内で、どのような手続きを行えば家を建てられるのでしょうか。
都市計画法・第43条
(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
1 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた土地以外においては都道府県知事の許可を受けなければ、第29条1項2号、3号の建物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第2号若しくは第3号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りではない。
- 都市計画事業の施行として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
- 非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
- 仮設建築物の新築
- 第29条第1項9号に掲げる開発行為その他の政令で定める開発行為が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
- 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
2 前項の規定による許可の基準は、第33条及び第34条に規定する開発許可の基準の例に準じて、政令で定める。
3 国又は都道府県等が行う第1項本文の建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設(同項各号に掲げるものを除く。)については、当該国の機関又は都道府県知事との協議が成立することをもって。同項の許可があったものとみなす。
次の2つの項目の建物以外を開発許可を取得した土地以外で建てるときは法43条の許可が必要となります。
- 法29条1項2号で農業林業漁業を目的とした施設や居住に係る建築物
- 法29条1項3号で駅や鉄道、図書館、公民館、変電所などの施設
さらに、ただし書きにて1号〜5号で掲げる建築物等についてもこの規定を除外しています。
つまり、自己用住宅の建替えも市街化調整区域では許可が必要となるわけです。
建替えなどの建築許可のほか、分家住宅や線引き前宅地の建築、農家住宅の建築などがあります。
なお、埼玉県の場合、許可基準(技術・立地)については政令第36条において定め、法第33条及び法第34条の許可基準に対応するものとなっています。これにより例えば立地基準において、目的又は用途等を限って許可し得る建築物等を定めています。
都市計画法施行令・第36条
(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可の基準)
1 都道府県知事(指定都市等の区域内にあっては、当該指定都市等の長。以下この項において同じ。)は、次の各号のいずれにも該当すると認めるときでなければ、法第43条第1項の許可をしてはならない。
1号 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の敷地が次に定める基準(用途の変更の場合にあってはロを除く。)に適合していること。
- イ)排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、敷地内の下水を有効に排出するとともに、その排出によって当該敷地その周辺の地域に出水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。
- 当該地域における降水量
- 当該敷地の規模、形状及び地盤の性質
- 敷地の周辺の状況及び放流先の状況
- 当該建築物又は第一種特定工作物の用途
- ロ)地盤の沈下、崖崩れ、出水その他による災害を防止するため、当該土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられていること。
2号 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内においては、 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の用途が当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合していること。
3号 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物が次のいずれかに該当すること。
- イ)法第34条第1号から第10号までに規定する建築物又は第一種特定工作物
- ロ)法第34条第11号の条例で指定する土地の区域内において新築し、若しくは改築する建築物若しくは新設する第一種特定工作物で同号の条例で定める用途に該当しないもの、又は当該区域内において用途を変更する建築物で変更後の用途が同号の条例で定める用途に該当しないもの。
- ハ)建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は不適当と認められる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設として、都道府県の条例で区域、目的又は用途を限り定められたもの。この場合において、当該条例で定める区域には、原則として、第8条第1項第2号ロから二までに掲げる土地の区域を含まないものとする。
- 二)法第34条第13号に規定する者が同号に規定する土地において、同号に規定する目的で建築し、又は建設する建築物又は第一種特定工作物(第30条に規定する期間内に建築し、又は建設するものに限る。)
- ホ)当該建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は不適当と認められる建築物又は第一種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの
(第2項略)
長い条文ですね。重要なのはこの本条にて技術基準(第1項第1号)及び立地基準(第1項第3号)の2つの許可基準を満たすことが規定されているということです。
まとめ
技術基準(第1項第1号)
次のうちいずれも満たす- その計画地の排水計画施設が、その地域の基準委に適合し、かつ周辺にも影響を及ぼさないこと
- 地盤の低下などの立地に応じた安全対策が講じられていること
立地基準(第1項第3号)
次のうちいずれかを満たす- 都市計画法・第34条第1号から第10号に該当する建築物等の計画
- 都市計画法・第34条第11号の条例で指定する区域で行う建築物等の計画
- 条例で区域・目的又は用途を限り定めた建築物等の計画
- 都市計画法・第34条第13号に規定する者が行なう建築物等の計画
- 市街化調整区域の周辺を勘案し、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの
一般的な建築許可までの流れ(第43条)
それでは許可基準を満たして建築許可を取得するために、どのような流れで手続きが進むのか、一般的な流れに沿って紹介します。
事前協議の中で技術基準及び立地基準を満たし本申請を行うという流れは法第29条と同じですが、立地基準において法第34条の何号に該当するかによって、協議の内容や提出物が変わって来ます。市街化調整区域の申請においては、市街化区域では提出しない下記のような書類等も必要になる場合があります。
市街化調整区域の申請時に必要な独自書類等
- 建築理由書
- 土地選定理由書
- 申請者の戸籍謄本
- 世帯全員の住民票謄本
- 閉鎖謄本
- 閉鎖公図
- 家系図
- 50戸以上の連たん図
- 既存の建築確認証
- 既存家屋建築時前後の航空写真
事前相談の段階で、許可申請を行うにあたり何が必要なのか把握することが大切です。窓口で上記のような書類等を要求された場合に、その書類等を揃えた上で再び事前相談を行うと良いでしょう。
なお、資料の取得により、申請者さえも知らなかった隠れていた真実が発見され、建築計画に影響を及ぼす場合もあります。事前調査、事前相談こそが本計画の肝要部分です。
【このページのまとめ】
- 市街化調整区域の建築行為は原則不可、例外で許可が必要
- 計画建物が都市計画法・第34条の各号いずれかに該当すること
- 許可権者が開発許可を必要と判断すれば第29条へ
- 許可権者が開発許可を不要と判断すれば第43条へ
- 政令・第36条第1項第1号にて技術基準を満たす
- 政令・第36条第1項第3号にて立地基準を満たすことを確認
- 事前調査が非常に大事
市街化調整区域の建築許可申請の説明は以上です。