対象不動産調査
宅地建物取引士の観点から、主として土地や建物の調査を行います。
法令関係や権利関係、前面道路の接道状況など、その土地を有効に活用するために何をどうしなければならないかを確認します。
地下埋設物調査と調査対象は重複する部分も多いですが、こちらは不動産を中心とした調査となります。現地でのチェック事項も多いため、調査内容は多岐に渡ります。
主として権利関係の確認をします。売主が真実の所有者とは限りません。
登記簿からはその土地の情報を始め、所有者の住所、氏名、相続の発生、抵当権の設定、共同担保の有無など、多くの重要な要素を確認することができます。
- 登記事項証明書(土地建物)の取得
- 閉鎖謄本の取得
- 公図の取得
- 地積測量図の取得
- 建物図面の取得
法令上の制限調査
主として宅地建物取引業法施行令3条1項に列挙される法令に基づく制限を調査します。
特に近年、豪雨による洪水や土砂災害等で自然災害への見直しが顕著となっております。
- 都市計画法に基づく調査
- 建築基準法に基づく調査
- 農地法に基づく調査
- 生産緑地法に基づく調査
- 景観法に基づく調査
- 土地区画整理法に基づく調査
- 宅地造成等規制法に基づく調査
- 土砂災害防止対策推進法に基づく調査
- 国土利用計画法に基づく調査
- 公有地拡大推進法に基づく調査
- 文化財保護法に基づく調査
- 土壌汚染対策法に基づく調査
- その他の法令に基づく調査
各種図面の取得
都市計画関連 | 開発建築関連 | 生活関連 | 道路関連 | 雨水関連 |
---|---|---|---|---|
□都市計画図 |
□開発登録簿 |
□給水配管図 |
□境界確定図 |
□河川台帳 |
生活の根幹である上下水道を始め生活関連施設の調査をします。ここでの調査不足は、ときに深刻なトラブルを起こす場合があります。
給水施設の調査
給水配管平面図を取得し配管状況を調査します。自治体により記載形式は異なりますが、主にその管の種類、管の口径、引込み状況などの確認ができます。また既存のメーターを確認することにより水道分担金の確認もできます。
特に数値は重要で、オフセット水平距離や土被りの深さ数値の記載は見逃さないようにします。
平面図で引込み状況などに疑義が生じたときは竣工図を取得して細かな点を確認します。
石綿セメント管(ACP)
三大都市圏の既成市街地や近郊整備地帯では見かけなくなりましたが、まだ撤去できていない自治体もあるのが現状です。
給水配管平面図の配管横に「DIP」や「VP」なる記載がありますが、これが管の種類です。その中でも「ACP」は石綿管というもので「Asbestos Cement Pipe」の略称です。
一般にアスベストと呼ばれ、昭和30年代から様々な建材に用いられました。給水管にも多く使用され、日本中の自治体で整備されました。しかし平成17年に中皮種を伴う健康被害が発覚、アスベストは順次撤去されることとなり、少しずつ整備され現在に至ります。
排水施設の調査
汚水や雨水の排水方法を調査します。汚水なら公共下水、浄化槽、汲み取り式のいずれか。下水道管理台帳を確認することになりますが、私道の場合は自治体に帰属していない場合があります。そうなると台帳に記載されませんので、現地にてマンホールなどを確認します。下水道台帳でも給水配管平面図と同じく数値を確認しますが、目的範囲の1つ先のマンホールの数値までを取得し、管種、管径、勾配、接続形状、施工年月日など確認します。
雨水では地域に則して処理方法が定められており、多くは宅内浸透もしくは溢れた分だけ側溝放流するオーバーフロー形式です。また前面道路に側溝がない場合は側溝整備も要求される可能性があります。特に事業計画として開発行為の許可が必要になるときは、併せて道路整備も求められる場合もあります。
ガス施設の調査
都市ガスかプロパンガスかを確認し、ガス事業者と連絡をとり図面のやり取りをします。図面で配管の位置、口径、土被りなど確認します。特にガス管が他人の土地に埋設されていないか注意します。さらに後日のトラブルを未然に防ぐため、宅地内のガス配管の所有権者が誰なのか確認します。工事予定の何日前に連絡すれば良いかなどの日程も重要です。給排水配管工事が終わったのにガス配管工事ができなければ、道路を正常な工程でつくることができなくなります。
電気施設の調査
住宅街の道路には少ないのですが、幹線道路など比較的大きな道路には電気や通信の埋設施設が多くあります。以前はセンターへ直接訪問して調査を行っていましたが、近年は対面以外のやり取りで調査ができるようになりました。
電力会社の調査では図面による埋設物の有無の確認に加えて、こちらの計画に照らして使用可能電力なども併せて確認します。
電柱の計画がある場合
事業計画によっては電柱の新設や移設などが必要になりますので、建物配置図や土地利用計画図など、最初の計画図面が完成したらすぐに担当者と打合せを開始します。というのも電力会社は協議、設計、施工と部署がそれぞれ異なるため打合せにかなりの時間が掛かります。また工事までに現地調査や立合い、地権者の同意や精算方法の承諾などもあるので、電柱新設まで3ヵ月〜半年くらいは見ておくのが通常となります。
実務の話【配管調査編】
古い家を建て替える際に、配管状況の確認はとても重要です。
昭和の中期に建てられた家は、建築確認申請も登記の手続きもしていない家が多くありました。また自分の敷地内に水道の配管をして、そこの土地を他人に切り売りしたために、水道管が隣地から引き込まれている事態になっている土地も少なくありません。
こうなると水道管を切りまわす工事が発生し、予算や工期に大きく関わります。前面道路に主たる水道管がない場合、それを引く工事をしなければならず、数十万円では済まないケースもあります。
お金の問題だけでなく隣地の同意も必要なのですが、この同意が本当に大変になる場合があるのです。
売買を目的とした土地であれば、測量士や土地家屋調査士による現況測量図や確定測量図の作成を予定するかと思います。現地調査もこの図面を確認しながら行います。
現在の基準点と座標値に基いた測量成果は精度も高く、多くの自治体もこの図面方式で管理しています。ただし、測量図面に記載されない部分は自分の目で調査する必要があります。現場に行かなければ分からないことが数多くあります。
土地の状況確認
- 土地の地形
接道状況を確認し建築計画の可否や配置に問題はないか。現状の建物は地形に対してどのように配置されているか。
- 土地の地盤
水はけや通気性、切土盛土など埋め立ての状況はどうか。
- 隣地との高低差
造成工事の際の根幹に関わる要素。既存の擁壁がある場合や、高低差が50cm以上ある場合は特に注意する。
- 日照の確認
南側を方位磁石で確認する。近隣の建物に加え、畑や駐車場の場合でも将来建設されうる可能性を考慮し調査。
- 境界の調査
図面に基づき目視で確認できる境界を探すが、登記所にある昭和52年以前の地積測量図は、境界の表示が義務付けられていなかっため信用力が乏しい。必ず自分の目で確認するが、長い年月の中で破損したり地中に埋まっている場合も多い。
- 越境の調査
経年変化に伴い隣地のブロックやフェンスが傾いたり、増築した部屋の換気扇がはみ出していたり、木の根が土地に侵入していたり、隣地の引込み電線があったりと越境問題の要素は非常に多い。
- 送電線の確認
上空に送電線などがある場合は建物の建築に制限を受ける場合がある。地上権や地役権が設定されている場合があり、法務局の登記事項証明書で確認できる。
- 工作物の確認
倉庫、犬小屋、個人の電柱、照明柱など目に入ったもの全て。
建物の状況確認
- 構造の確認
建物の柱や梁などの内部構造は見た目から判断するのは難しいが、現存する建築図面や法務局で取得した登記事項証明書などで確認する。増改築がなされている建物は、床面積の変更のほか、図面にあったはずの柱や梁がない場合もある。雨漏りがあれば天井や壁に特有の痕跡が残る。また台所の床下収納からは土台や基礎を確認できる。
- 付帯設備の確認
水廻り関係の設備、照明関係や、ドアなど建具関係、庭廻りの設備も売主といっしょに確認する。使用している本人が1番把握しているはずなので、聞き取りがメインとなる。特に給湯機は交換に周期があるので後のトラブルになりやすい。
- 法令への適合性を調査
対象物件が建築基準法令に適合しているか。無理な増改築などで法令に適合していない建物は、原則として住宅ローンの審査が通らない。
- 建物の欠陥を調査
雨漏りやシロアリ被害などの「物理的な欠陥」と、過去に人の死が絡む事件があった場合などの「心理的欠陥」に大別される。不適合責任を追及される恐れがあるので慎重に調査する。
- 敷地の利用権を確認
土地と建物の所有者が異なる場合、その土地の利用権を調査する。当事者からの聞き取り・権利証・契約書・固定資産税評価証明書など。
- 占有者の確認
賃貸などで売主以外の者がその建物に住んでいるとき、引き渡し期日になっても明渡さないなどのとトラブルを未然に防ぐため、可能な限り直接面会し、占有者の本人確認と明渡しの意思の確認をしておく。できれば承諾書を取る。
道路や近隣の状況確認
- 公道と私道の境界点
道路に接している部分が公道であれば役所で取得した図面をもとに境界を確認。道路に接している部分の境界点は破損している場合も少なくない。なお接している道路が位置指定道路などの私道の場合、使用に制限が伴う可能性もある。目の前の道路持分が別の住人である場合も多い。以前そこに自転車やバイクを置くなど近隣トラブルの事例もあった。
- 道路幅員の計測
巻尺などを用いて必ず自分で幅員を計測し数値を確認。4m以上であるかを確認する、4mに足りていなければ道路後退(セットバック)が必要なので役所にて詳細を確認する。建築基準法上の道路確認となるので、多くの場合は道路課ではなく建築指導課の管轄。
- 私道の調査と承諾書
道路が私道の場合は、法務局の登記事項証明書でその道路の面積や権利関係を調査。道路の一部が分筆されていてそこを持つのか、それともその道路全体を各自が持分で持つのか。そしてその道路を使用し、かつ工事が発生した場合の工事の承諾書が必要。いわゆる通行掘削の承諾書を道路権利者全員からもらう。そして訪問した際に、近隣トラブルの種がないか会話の中で確認する。
- 道路の整備状況を確認
建築の可否が道路によって決定されるので道路付けは非常に重要。行き止まり道路か、通り抜け道路か、舗装状況はどうか、側溝の整備状況はどうか、正体不明のマンホールがないか、車の往来はどうか。
- 第三者の通行路調査
敷地内に第三者の通行路が存在する場合がある。土地の通行権や通行地役権などの権利の設定状況、権利の内容、通行料や使用料が発生しているのか、売主と確認しながら調査する。
- 生活関連調査
既に役所や企業で取得している図面や資料に基づき、現地にて相違がないか調査をする。地下埋設の配管は当然目視では確認できないが、マンホールの位置は確認できる。確認していると、どの図面にも記載されていないマンホールを発見する場合もある。私設管の場合、工事が完了したばかりで図面に反映していない場合、資料にはない水路が地下を這っている場合など。
- ゴミ集積所の確認
ゴミ集積所の利用は生活を送る上で不可欠なものだが、トラブルの火種になることも少なくない。「リビングからの視界に集積所が入る」と解約の話になったという事例もある。どこの集積所を利用するかも重要だが、その位置関係や管理方法、現状のトラブルの有無、その解決方法なども確認する。既に近隣トラブルが勃発している集積所は数多くあり、ゴミ問題は1番最初に取り掛かるべき問題と言っても過言ではない。
- 周辺施設の確認
最寄りの駅・最寄りの幹線道路・最寄りのバス停・市役所や図書館などの公共施設・スーパーマーケットやドラッグストアなどの生活用品購入施設・公園や広場・警察署や消防署・病院などの医療機関・大規模マンション計画・過去の土地利用状況・近隣トラブル・ハザードマップ・液状化マップなど。
対象不動産の調査の項目は以上です。