地下埋設物の調査
主として道路の調査、特に地中に埋設されている普段目にしない部分の状況を調査します。上下水道、ガス、電気、通信など、私たちの生活に欠かせない重要なインフラですが、普段その姿を目にすることはありません。しかし実際は道路の地下で、人間の体内の血管のようにその配管が複雑に張り巡らされています。事業計画として新しく埋設管を敷設しようとする場合は、この地下の状況を含む道路全体を把握しなければなりません。
道路調査
国道、県道、市道、私道、一概に道路といってもその種別により道路管理者は異なります。
例えば国道なら国土交通省の出先機関にて道路の図面取得を始め、掘削の制限や組成状況など様々な調査を行います。
また相手方によっては情報公開法に基づく開示請求を行わなければならない機関も存在します。
河川調査
埋設物ではないのですが、河川エリアの確認はとても重要です。
河川の管理者は国や県のイメージが強いですが、市町村が管理している河川も存在し、その管理形態は様々です。河川付近の工事を計画する場合、河川区域や河川保全区域が設けられており、その区域内は制限を受けます。河川法は許可までに1ヵ月以上かかる場合もあり、事業の工程に大きく影響しますので慎重な調査が求められています。
あまり聞きなれない言葉ですが、河川の上流から下流に見たときに、右側が右岸、左側が左岸と呼ばれています。地図を上から見たときの右と左という考え方とは異なります。各地で右岸事務所や左岸事務所といった名称を用いています。
県水調査
私たちの普段の生活に欠かせない水道水は、地域にもよりますが市町村が作っている水と、県で作っている水とを併せて水道事業者が供給しています。県の浄水場から埋設管が伸びており、多くは幹線道路の地下を進み市町村へ送水されます。埼玉県ですと下記の5つの浄水場がエリアごとに市町村へ送水しています。
- 大久保浄水場
- 新三郷浄水場
- 庄和浄水場
- 行田浄水場
- 吉見浄水場
県の浄水場と聞くとイメージが沸かないかも知れませんが、多くの人は子どもの頃に浄水場を訪れているはずです。小学生の頃に毎年必ず社会科見学という学校行事がありませんでしたか?
遠足とは少し違う主旨の学校行事で、バスに乗って浄水場へ到着し、午前中に広い施設内を巡り、施設内の芝生でお弁当を食べて帰ってくるという体験をした人は多いのではないでしょうか。
役所調査
市町村が管理する上下水道や道路、水路などの調査です。最近では電子化が普及され備え付けのパソコンで簡単に図面が取得できます。市町村によってはホームページで公開しています。重要なのは図面上の数値で、その部分が小さくて読めなかったり、取得した図面の範囲が狭すぎて数値情報が足りていなかったりすると、事業計画が成り立ちません。また、終わったばかりの工事は図面に反映されるまでに1〜2年かかる場合があります。
民間企業調査
計画地に地下埋設物を設置している民間企業に赴き、配管の状況を図面にて確認します。電気事業者・ガス事業者・通信事業者などの調査が主体です。近年はセキュリティの関係上、身分証明や滞在時間の明記など厳重な管理体制が目立ちます。役所の図面とは違い、公にしていない企業情報ですので当然といえば当然です。また取得した図面は目的以外のものに使用してはならず、図面の目的が達成された後は廃棄が義務付けられています。
同種複数の埋設物に注意
電気・ガス・通信など各事業者を調査しても、その事業を行っているのがその事業者だけとは限りません。ガスを例に上げるとすれば、その道路に別のガス事業者の別の配管が敷設されている場合もあります。また同じ事業者でも通常の配管に加えて、コンクリートのボックスカルバートなど別の形態で管理している場合もあります。
実務の話【配管調査編】
通常の手段では調査段階で確認が難しい埋設管は存在します。
私の経験ですが、以前取得した図面に管の種類も大きさも全く記載されていない謎の配管があり、詳細が分からず現地に行くしかありませんでした。訪れた先は何と比較的大きな病院で、医療用に特別な配管を設けていました。しかも古い私設管のため役所に情報はなく、その場で説明し院長に許可をもらい、暗い倉庫で院長と図面を探しました。
しばらくして数十年前の病院の見取り図が見つかり配管状況を確認できました。もし調査段階でこの配管を見落として工事で配管を破損させてしまい、病院の業務に支障をきたす可能性もあったと考えるとゾッとします。
道路はその道路にしか埋設されていない特殊な埋設物も存在します。
例え線の1本でも「おや?」と思ったら、その正体が判明するまでしっかりと調査をしたほうが良いでしょう。
地下埋設物調査の項目は以上です。